我が国は世界でも比類なき速度で高齢化が進み、それに連れて認知症患者の数も増え2040年には400万人を突破すると予想されています。
この状況に対応すべく認知症発症の原因究明及び根本治療薬の開発が急がれていますが、徐々には進んでいるものの残念ながら認知症患者の増加のスピードに追い付いていないのが現状です。また、アルツハイマー病の免疫療法など実用化の可能性が高い治療法も実際に患者さんに使用できるのは5~10年先のことであります。幸い我が国ではアリセプトが認可され症状の改善に役立っていますが十分とは言えません。
認知症の予防および治療には、生活環境の改善やサプリメント、運動療法など、従来の医療・治療法にとらわれないさまざまなアプローチが提案され、試行がなされています。そのなかには将来の認知症治療の進展へとつながる可能性を感じさせるものもでてきています。しかし、理論や効果の測定・判定等に十分な科学的・医学的な検証がなされているとはいえないものもあり、今後の課題となっております。
今回、さまざまなアプローチのなかから、特にサプリメントによる認知症予防と認知機能や随伴行動(BPSD)の改善の可能性に焦点を合わせ、in vivo およびin vitro の様々な試験を行い、認知症に効果が期待できる素材の発見、またその効果の科学的な検証を行うために、大学、病院の認知症研究者を中心とした認知症サプリメント研究会を設立することといたしました。
従来の医学的な研究とは視点の異なる我々の研究が、認知症予防・治療への一助となり、患者さんをはじめ、介護家族にとってあらたな予防・治療の選択肢を提示できるようになることを目指して活動を展開していきたいと思います。中長期的にはこの組織がNPO等公共的な組織へと発展し、今後高まる認知症サプリメント需要に対して国民の信頼に積極的に応えていく組織にしてきたいと希望しております。
平成21年8月1日
発起人代表
田平 武
事務局所在地
| 〒193-0998 | 東京都八王子市館町1163 | 東京医大八王子医療センター内 |

第1条(名称)
本会は、「認知症サプリメント研究会」と称する。
第2条(目的)
本会は、認知症サプリメントの基礎から臨床まで系統立てた幅広い研究を行い、以って認知症患者、その家族及び認知症臨床に関わる医師、看護師、介護士、薬剤師を含めた認知症医療従事者、研究者の要望に対し最新かつ適切な情報を提供していくことを目的とする。
第3条(事業)
本会は、第2条に掲げた目的を達成するために、次の事業を行う。
1. 認知症サプリメントの評価試験を実施する為のプロトコールの策定
2. 認知症サプリメントのin vivo 及びin vitro 試験による科学的検証
3. 認知症サプリメントの研究成果の発表及び広報活動
4. 認知症サプリメントの研究発表会の開催
5. その他、本会の目的を達成するめに必要な事業
第4条 (会員)
本会の会員は、世話人の推薦を受け世話人会の了承を受けた者とする。
第5条 (会費)
本会の一般会員の会費は年額1口1,000円とする。
本会の賛助会員の会費は年額1口300,000円とする。
第6条(役員)
1. 本会には次の役員をおく。
代表世話人 1名
世話人 数名
監 事 1名
2. 役員の任期は1年とし、再任を妨げない。
第7条(役員の選出)
代表世話人は世話人の中から互選により選任される。
第8条(役員の役割)
1. 代表世話人は本会を代表し、世話人会を招集するとともに、本会の業務を統括する。
2. 世話人は、代表世話人を補佐するとともに、世話人会の構成員として本会の発展に寄与するものとする。
第9条(世話人会)
1. 世話人会は、第5条に規定する役員により構成される。
2. 世話人会は、必要に応じて代表世話人が招集する。
3. 議長は代表世話人が務める。
第10条(審議事項)
世話人会は、次の事項を審議する。
1. 本会の運営に関する事項
2. 本会が行う事業に関する事項
3. その他必要と認められる事項
第11条 (事務局)
本会の事務局を下記に置く。
〒193-0998 東京都八王子市館町1163 TEL:042-665-5611
東京医大八王子医療センター内
認知症サプリメント研究会事務局
第12条(附則)
1. 本会会則についての細則は別に定める。
2. 本会会則及び細則の変更は世話人会の承認による。
3. 本会会則は平成21年8月1日より施行する。
医師は、科学者でなければならない。しかし医療の進歩は、未知の領域に挑戦するなかで得られるものです。また臨床では、現在の科学の枠組みでは必ずしも説明できないような代替医療などの意義も否定しえません。
認知症サプリメント研究会では、サプリメントによる認知症予防と認知機能や随伴行動(BPSD)の改善の可能性に焦点を合わせ、in vivo およびin vitro のさまざまな試験を行い、認知症に効果が期待できる成分の発見、またその効果の科学的な検証を行うための研究会です。
そうした成分の1つとして、まず初めに米ぬかから多く抽出されるポリフェノールの一種「フェルラ酸」の研究に現在取り組んでいます。今後、さらに新たな成分の発見や科学的な検証に努めていきます。
化学式 C10H10O4
モル質量 194.184 g/mol
融点 168 - 172°C
■米糠より効率よくフェルラ酸フリーを抽出することに成功
フェルラ酸はケイ皮酸誘導体の一種で、1886 年に、オーストリアのHlasiwetz Barth によりオオウィキョウ属のFerula foetida から、分子式 C10H10O4を有する3-methoxy-4-hydroxycinnamic acid として単離・構造決定されました。
フェルラ酸およびその誘導体は、植物の細胞壁を形成するリグニンの前駆体で、遊離(フリー)、エステル型、リグニンの形で、微量ながら、多くの植物体のさまざまな器官に広く分布しています。
その生化学的役割は、種子発芽抑制作用、インドール酢酸酵素阻害およびド-パ脱炭酸酵素阻害作用です。また、微生物や病害虫に対する防御作用も有していることが知られています。
フェルラ酸の製法においては、バニリンとマロン酸からの合成法が1935年にDuttらによって確立されました。
植物の細胞壁に含まれるフェルラ酸は、セルロースなどの他の物質と結合しています。この状態では、ヒト体内にフリーのフェルラ酸を取り込むことはできません。一方、一部の植物では、細胞壁以外に、根や種子、果実の部分において、体内に取り込まれやすいフリーのフェルラ酸が多く存在することがわかっています。
フェルラ酸フリーを豊富に含む食物のうち、根としては、漢方の生薬としても使われるセリ科の当帰(トウキ)や川弓(センキュウ)があります。種子としては、米、小麦、大麦などが挙げられます。果実としては、リンゴ、オレンジ、パイナップルなどがあります。

米や小麦など穀物のフェルラ酸は、主に種皮と胚乳の間に存在する糊粉層といわれる部分に存在します。玄米の場合、精米して白米にすると、白米(胚乳)にはほとんどフェルラ酸は含まれません。精米で取り除かれた米糠にこそ、フェルラ酸は存在します。
これまで化学合成でしか製造できなかったフェルラ酸ですが、和歌山県工業技術センターが、日本人の主食であるお米、その精米過程から生まれる天然で大量の米糠から効率よく抽出する技術を開発することに成功しました。これにより、フェルラ酸の利用が容易になりました。
■抗酸化作用をもつポリフェノールの一種
フェルラ酸は、植物に含まれるポリフェノール類の一種です。ポリフェノールは、分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ(OH)基を持つ、化学物質の総称です。OH基を多く持つことから強い抗酸化作用を有します。しかも、遊離して存在するフェルラ酸は、植物に含まれる他のポリフェノール(フラボノイドなど)と比べて、体内への吸収率や利用率が極めて高いという報告があります。また活性酸素の消去作用は、活性酸素の毒性から生体を防護する酵素として知られるスーパーオキシドジスムターゼと同等であることが報告されています。
このようなことからフェルラ酸は、1995年8月に「化学的合成品以外の食品添加物」として、また2001年3月には紫外線吸収用の化粧品原料として、それぞれ国より認可され、その安全性が認められています。
■フェルラ酸サプリメントによる、認知症改善への期待
一方でフェルラ酸は、医療分野でも研究が進み、21世紀に入ったこの10年間に、フェルラ酸による脳機能改善の作用に関する報告が次々と発表されました。
まず2001年に、アルツハイマー型認知症動物モデルであるβ-アミロイドペプチドを脳室内に投与し学習記憶の低下が見られたマウスに、フェルラ酸を投与すると通常状態まで回復するという報告がなされました。また、2005年、2006年には、β-アミロイドペプチドが脳内で酸化ストレスを誘発し炎症を引き起こすのに対し、フェルラ酸が保護作用を示すことが、日本のみならず世界中から報告されました。
さらに2008年には、血管性認知症動物モデルである脳虚血再かん流ラットにおいて、フェルラ酸はミクログリアの細胞間接着分子(ICAM-1)のmRNAレベルを減少させ、酸化ストレス関連アポトーシスに対する脳神経保護作用を示すことが報告されました。
これらの研究成果は、現在知られている認知症の大部分を占めるアルツハイマー病型認知症、また、血管性型認知症にフェルラ酸が有効であることを示唆しています。
現在、世界中で認知症発症の原因究明および治療薬の開発が急がれていますが、いまだ我が国で認可されている医薬品はドネペジル(アリセプト®)のみです。急増する認知症患者の実態を見るにつけ、従来の医療・治療法にとらわれない、生活環境の改善や運動療法、そしてサプリメントの併用など、様々な手法を用いた治療アプローチが今後ますます必要になってくると思われます。
■インターネットで検索できる主なフェルラ酸研究論文
世界最大の科学論文データベースPubMedでも、概要を閲覧できます。(「Ferulic acid destabilizes preformed b-amyloid fibrils in vitro.」を除く)
●Br J Pharmacol. 2001 May;133(1):89-96.
Protection against beta-amyloid peptide toxicity in vivo with long-term administration of ferulic acid.
Yan JJ, Cho JY, Kim HS, Kim KL, Jung JS, Huh SO, Suh HW, Kim YH, Song DK.
●Biochim Biophys Acta. 2005 Jun 30;1741(1-2):140-8. Epub 2004 Dec 25.
Protection against amyloid beta-peptide (1-42)-induced loss of
phospholipid asymmetry in synaptosomal membranes by
tricyclodecan-9-xanthogenate (D609) and ferulic acid ethyl
ester: implications for Alzheimer's disease.
Mohmmad Abdul H, Butterfield DA.
●Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2005 Jul;29(6):901-7.
Inhibitory effects of long-term administration of ferulic acid on
astrocyte activation induced by intracerebroventricular injection
of beta-amyloid peptide (1-42) in mice.
Cho JY, Kim HS, Kim DH, Yan JJ, Suh HW, Song DK.
●Acta Pharmacol Sin. 2005 Aug;26(8):943-51.
Sodium ferulate prevents amyloid-beta-induced neurotoxicity
through suppression of p38 MAPK and upregulation of ERK-1/2
and Akt/protein kinase B in rat hippocampus.
Jin Y, Yan EZ, Fan Y, Zong ZH, Qi ZM, Li Z.
●Biochemical and Biophysical Research Communications 336 (2005) 444?449
Ferulic acid destabilizes preformed beta-amyloid fibrils in vitro.
Kenjiro Ono, Mie Hirohata, Masahito Yamada
●J Neurosci Res. 2006 Aug 1;84(2):418-26.
In vivo protective effects of ferulic acid ethyl ester against
amyloid-beta peptide 1-42-induced oxidative stress.
Perluigi M, Joshi G, Sultana R, Calabrese V, De Marco C, Coccia R, Cini C, Butterfield DA.
●Brain Res. 2008 May 13;1209:136-50. Epub 2008 Mar 18.
Ferulic acid provides neuroprotection against oxidative stressrelated
apoptosis after cerebral ischemia/reperfusion injury by
inhibiting ICAM-1 mRNA expression in rats.
Cheng CY, Su SY, Tang NY, Ho TY, Chiang SY, Hsieh CL.
※フェルラ酸含有サプリメントの詳細は、下記へ:
http://www.glovia.net
化学式 C21H20O6
モル質量 368.38 g/mol
融点 183°C
ショウガ科のウコン(英名:ターメリック、Curcuma longa)は、亜熱帯アジアなどに広く分布する多年草で、肝臓の働きを助け二日酔いの予防効果があると言われ、日本では最も身近なサプリメントの一つと言えます。このウコンの乾燥根茎を粉砕・混合してできた粉末(ターメリック)が、カレーのスパイスとして知られています。クルクミン (Curcumin) は、ターメリックに約2~5%含まれる色素で、共役性を有する化学構造から、鮮やかな黄色を持ち、天然の食用色素として広く用いられています。そのため、クルクミンの安全性が高いことについては、FDA からも認知されています。
ウコンの薬効は古くから知られ、インドの伝統的学問で予防医学を重視した「アーユルヴェーダー」では、ウコンを呼吸器疾患、肝疾患、食欲不振、関節リウマチ、糖尿病による障害、鼻水、咳、副鼻腔炎に、また、古代ヒンズーではこれに加えて捻挫、浮腫に、さらに中国では腹痛にも用いられてきました。我が国においても、ウコンは古くから生薬として使われております。
化合物としてのクルクミンは1815年に単離され、1870年に結晶化、1910年に化学構造式が決定され全合成されました。クルクミンは構造式から判るように、ポリフェノールの一種で、クルクミノイドに分類されます。ターメリック中には、クルクミノイドとして、クルクミン(含有率~77%)以外にクルクミンⅡ(demethoxycurcumin、~17%)、クルクミンⅢ(bisdemethoxycurcumin、~3%)と、最近見つけられたシクロクルクミン(Cyclocurcumin) が含まれています。
クルクミンはポリフェノールとして、フリーラジカル消去作用を有するのみならず、グルコース6燐酸化酵素阻害作用、NF-κB活性化抑制作用、Epidermal Growth Factor Receptor (EGFR) 発現抑制作用、Human Immunodeficiency Virus (HIV) インテグラーゼ阻害作用、Cyclin D1 (CCND1) 発現抑制作用、Cyclooxygenase-2 (COX-2) 阻害作用、血管新生阻害作用、アポトーシスの誘導など多彩な作用を有しています。その結果、抗酸化作用、抗炎症作用、抗癌作用、肝臓保護作用、血栓形成抑制作用、心筋梗塞防止作用、低血糖防止作用、抗リウマチ作用、抗アミロイド作用など、多くの有用な薬理作用が報告されています。現在、クルクミンは、膵臓癌、結腸・直腸癌、多発性骨髄腫、乾癬、アルツハイマー病 (AD) による認知症などを適応として、臨床治験が進められています。なお、クルクミンについては、Goelら(2008年)による興味あるタイトルの総説(Curcumin as “Curecumin”:from kitchen to clinic)があり、全体像の理解に有用な論文です。
■ クルクミン・サプリメントによる認知症改善への期待
● 疫学調査
カレーを常食するインド人と米国人の70~79歳、および80歳以上のADの発症比率を比較したGanguli ら(2000年)による疫学調査で、インド人のADの発症頻度は、アメリカ人の1/4と報告されています。また、老齢(60~93歳)のシンガポール人を対象としたNg ら(2006年)による疫学調査では、カレー摂取の頻度(①常食、②時々、③まれに、および④皆無)が、認知機能検査「MMSE」スコアに及ぼす影響について調べたところ、④のカレーを一度も食べたことがない人より、①②③のすべての群が勝っていました。これらの疫学調査では種々の要因が絡むことから、安易に結論できませんが、クルクミンがADの予防に有効であるとの推定を支持する結果かも知れません。
●基礎成績
①AD型認知症
AD患者における神経炎症反応には、炎症性サイトカインの増加、およびアミロイドベータタンパク(Aβ)がミクログリアを活性化することにより発生するフリーラジカルの関与が考えらえています。疫学的調査では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期使用が、AD発症リスクを下げると報告されています。基礎研究でもイブプロフェンは、アルツハイマー病のマウスモデル(Tg2576)において、炎症反応とAβ凝集を抑制します。しかし、COX-1をターゲットとしたNSAIDsの過剰な使用は、消化管、肝臓、腎臓の障害を与えるため、その代わりの選択肢として、安全なクルクミンが期待されています。
クルクミンのADに対する基礎検討は、UCLAの研究者により2001年から精力的に行われており、現在では国内外からも多数の報告があります。2005年には、UCLAのRingmanらによりクルクミンとADに関する総説も出ています。UCLAのグループによれば、クルクミンのAD発症の予防・ADの進行の抑制に重要な薬理作用として、抗酸化作用、抗炎症作用、コレステロール低下作用、血小板凝集抑制作用およびアミロイド解離作用を挙げています。Lim ら(2001年)は、ADモデルであるTg2526 マウスに対して、低 (160ppm) および高投与量 (5000ppm) のクルクミンは、脳内で上昇する酸化蛋白とIL-1βを減少させ、低濃度では、アストロサイトのマーカGFAPを減少させ、不溶性Aβ、可溶性Aβおよびアミロイド斑は43%~50%減少させることを報告しています。
In vitro 試験で、Yangら(2005年)はクルクミン(0.125 および 2μM) はAβ40による凝集を濃度に依存して阻害し、Aβ40による凝集塊を解離させること、また、クルクミンはAβ42オリゴマーによる神経細胞の障害を抑制し、神経細胞生存率の低下を阻害することを報告しています。さらに、老齢のTg2576マウスで、クルクミンは頸動脈投与のみならず混餌(経口)投与でも脳血液関門(BBB)を通過して脳内に入り、クルクミンが大脳皮質および海馬のアミロイド斑に結合することを明らかにしており、重要な知見と考えます。
② レビー小体型認知症
レビー小体型認知症では、パーキンソン病および多系統萎縮症と同様、患者の脳の黒質にレビー小体が出現します。レビー小体とは、α-シヌクレインと呼ばれる140アミノ酸残基からなる蛋白質の凝集体で、α-シヌクレインの凝集は、レビー小体型認知症や多系統萎縮症の発現に重要なステップでもあります。2006年Ono and Yamadaは、クルクミンがこのα-シヌクレインの凝集形成を抑制し、すでに形成された凝集を不安定化するので、クルクミンはレビー小体型認知症の予防治療に有効であろうと報告しています。
●クルクミンの吸収・分布
一般的にポリフェノール類は、消化管からの吸収が悪いことが知られています。クルクミンも同様で、1998年Shobaらは、ヒト試験において、クルクミンの経口吸収が悪いことに加えて、体内で急速に代謝されることから、クルクミンは生体内利用率(BA)が低い化合物であると報告しています。また、彼らによると、クルクミンは黒コショウ成分のピペリンと同時に摂取すると、腸管膜での代謝吸収の改善が見られ、BAが大幅に上昇すると報告しています。市販カレールウの多くにはターメリックに加えて黒コショウ=ピペリンも入っており、前述したカレーの摂取の有無に関するADの疫学調査で、良い結果が出た理由の一つとして、ピペリンによるクルクミンのBA改善作用の結果、クルクミンの脳内濃度が上昇したことも考えられます。このように、ピペリンはグレープフルーツと同様に、クルクミンのみならず薬物の吸収代謝にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、一部の医薬品との飲み合わせには注意が必要かも知れません。
クルクミンは油に溶けやすい色素のため、油と一緒に摂ると、吸収が良くなることが知られています。この点に着目して、クルクミン溶解用の油として、優れた薬効も併せ持つ「スクワレン」を用いたソフトカプセル(特許製品)が商品化されています。
クルクミンの脳内移行の検討は、認知症をターゲットとするサプリメントとして重要と考えられます。前述のYang ら(2005年)の成績、あるいはGarcia-Allozaら(2007年)のMultiphoton Microscopy (MPM) を用いた報告のように、経口投与されたクルクミンは、BBBを通過してADモデルマウスの脳内に入り、脳のアミロイド斑に強く結合することが明らかにされています。また、直接的な証明として、1999年Pan らのマウスを用いた動態試験からも明らかで、クルクミンの0.1g/Kgのマウス腹腔内投与で、脳内のクルクミン濃度が0.41μg/gと、脳内に移行することが確認されています。Begumら(2008年)は、クルクミンの安定代謝物のテトラヒドロクルクミン(tetrahydrocurcumin, THC)と比較試験を行い、クルクミンはTHCより活性が勝れ、THCより吸収が悪くて血中濃度は低いにもかかわらず、脳内への移行はTHCと同程度であったと報告しております。
●臨床成績
2008年Baumらは、AD患者に対して、クルクミン6ヶ月投与によるプラセボを対照とした二重盲検試験を実施しました、その結果、クルクミン4g/日投与群では、1ヶ月目から脳内Aβ沈着の解離によるものと考えられる血清Aβ40値の上昇傾向が見られました。この試験で、1 および 4g/日の連続6ヶ月の経口投与にもかかわらず、重篤な副作用は見られず、高用量の4g/日投与群の方がむしろ副作用が少ない傾向を示しました。この臨床試験からも、クルクミンは安全性の高いサプリメントであることが判ります。
クルクミンの総説
●Biochem Pharmacol. 2008 Feb 15; 75(4):787-809. Epub 2007 Aug 19.
Curcumin as "Curecumin": from kitchen to clinic.
Goel A, Kunnumakkara AB, Aggarwal BB.
PubMed:17900536
クルクミンの抗AD作用の基礎文献
●Neurobiol Aging. 2001 Nov-Dec;22(6):993-1005.
Phenolic anti-inflammatory antioxidant reversal of Abeta-induced cognitive deficits and neuropathology.
Frautschy SA, Hu W, Kim P, Miller SA, Chu T, Harris-White ME, Cole GM.
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The curry spice curcumin reduces oxidative damage and amyloid pathology in an Alzheimer transgenic mouse.
Lim GP, Chu T, Yang F, Beech W, Frautschy SA, Cole GM.
PubMed:11606625
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Curcumin interaction with copper and iron suggests one possible mechanism of action in Alzheimer's disease animal models.
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●J Biol Chem. 2005 Feb 18;280(7):5892-901. Epub 2004 Dec 7.
Curcumin inhibits formation of amyloid beta oligomers and fibrils, binds plaques, and reduces amyloid in vivo.
Yang F, Lim GP, Begum AN, Ubeda OJ, Simmons MR, Ambegaokar SS, Chen PP, Kayed R, Glabe CG, Frautschy SA, Cole GM.
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